メンタリング支援
メンター制度で広がる人材育成の可能性
メンター制度は、新入社員の育成や離職防止につながる効果的な人材育成施策であるとともに、企業における「人を育てる組織文化」を作っていくための土台にもなり得る、大きな可能性を持った取り組みです。
それゆえに、せっかく制度を導入するのであれば、ぜひとも成功させたいものです。「制度だけ作って、あとは現場任せ」「他の会社のやり方を真似るだけ」ではうまくいかないのは、あらゆる人材育成施策に共通します。個々の企業における目的や、メンター・メンティそれぞれの置かれている状況や課題を見極め、自社独自のメンター制度の構築することが成功のカギとなります。
メンター制度の導入支援ツールの提供やメンター向け研修・キックオフの実施など、様々な形でサポートしています。何か、疑問やご相談等があれば、ぜひお気軽にご連絡いただければと思います。
メンタリング
メンター制度を一言でいうと「新入社員などの育成対象(メンティ)に対して、先輩社員(メンター)との定期的な面談(メンタリング)を行うことを制度化したもの」です。 育成の対象は新入社員に限りません。 役員クラスをメンターにして管理職候補を育成する制度、シニア社員をメンターとした制度など、様々なメンタりんぐが可能です。新入社員を育成対象としたメンター制度は多くの企業で取り入れられています。
メンターとは
新入社員を育成対象としたメンター制度において、メンターは日常の教育指導を担当する「OJT担当者」とは一線を画します。あえて、日常業務では接点の少ない先輩社員をメンターとすることで「職場でのリアルな悩みを相談しやすい」「仕事や将来についての視野が拡大する」という効果が期待できます。
メンターは入社4~8年目程度の管理職手前の若手・中堅層から選出することが多いようです。ある程度の業務経験と自分なりの考えを持ち、新入社員に対して幅広い視野・視点を提供することが可能でありながら、年齢的にあまり離れていない「話しやすさ」の面からも適している年代といえるでしょう。また、メンター側にとっても、管理職手前の段階で人材育成の実践機会が得られるという一石二鳥の施策となります。
メンター制度とは
メンターが行うメンティへの成長支援行動をメンタリングと呼びます。このメンタリングには、情報提供、面談によるアドバイス、フィードバック、傾聴など様々な形態がありますが、これを「制度」として行う場合、「月1回60分程度の面談を1年間行う」などのガイドラインを設けて実施します。多くの場合、あまりテーマを絞り込まず「なんでも相談できる関係」という位置づけで自由に対話する、という運用が多いようです。
なぜ、メンター制度が必要なのか?
メンター制度は「本来、自然に発生する先輩後輩の育成的な人間関係を制度的に作りあげるもの」ともいえます。そのため、企業の人事部門がメンター制度の導入を提案した際に経営陣や現場からの疑問や反発があることも少なくありません。「先輩社員が新入社員の面倒を見るなど、直属の部門でしっかりやるべきだ。あえて制度にして、時間を掛ける意味が分からない」というものです。この意見には一理ある、ともいえます。確かに「育成」の舞台や主人公は、現場の所属部門や直属上司であるべきです。
しかし今や、それだけでは機能しなくなってきている、というのが現実でしょう。一昔前であれば、悩みを抱えていそうな新入社員には「飲みにケーション」の場も含め、先輩社員が積極的に関与できる関係やコンテキストが構築されていました。現在では、価値観も多様化するなか、先輩後輩の関係も希薄になってきています。加えて、第一線の先輩社員は、話す時間もないほど忙しいということも珍しくありません。何かの「お膳立て」がなければ、なかなかお互いに声も掛けづらく会話もできない状況といえるのではないでしょうか。
メンター制度 本来の効果とは?
では、新入社員向けのメンター制度とは「話を聞いてあげて、離職を防止する」ことが最大の目的なのでしょうか。実はメンター制度がうまく運用されると、「育成」の面からも大きな効果が期待されます。
メンタリングでの対話を工夫することで「起きた出来事を振り返り、自分なりに意味づけし、それを実践に活かしていく」ことの習慣づけが可能となります。これはまさに「経験学習」の実践トレーニングです。
このような「対話するスキル」「内省するスキル」を高めることは、一朝一夕にできるものではありません。個人としても、組織としても、継続的な取り組みが必要ですが、それをメンター制度という形で推進できるのです。まさに「人が育つ、人を育てる組織文化」を作っていく土台ともなり得ます。これこそ、メンター制度の持つ大きな可能性のひとつといえるでしょう。
また、メンター制度を導入した企業において、メンターからよく聞かれる声は「新入社員の育成を目的にしていると思って始めましたが、私自身の成長に大きな効果がありました」というものです。育成対象となるメンティだけではなく、メンター側の成長にも大きく寄与するのがメンター制度の特徴です。メンターとしての体験によって「人の育成とは、一方的に指導するものではなく、自分も共に成長することによって実現される」という人材育成の本質を掴む方もいらっしゃいます。
このように「良いこと尽くめ」に見えるメンター制度ですが、「うまくいかない」企業も少なくありません。なぜうまくいかないのか、その原因を考えていきます。
なぜ、メンター制度がうまくいかないのか?
メンター制度は、「運用がうまくいっている=効果が出ている企業」と「効果の出ていない企業」の明暗がはっきり分かれる傾向があります。また、うまくいっている企業のなかでもメンターとメンティの対話が「うまくいっているペア」と、「うまくいっていないペア」に分かれてしまう、という問題も見受けられます。人事として何もフォローせずに運用をメンターに任せるだけでは、うまくいかないことがほとんどです。
では、「うまくいかない」というのはどのような状態なのでしょうか。多くの場合、「続かない」という問題が噴出してきます。初めの2~3回は、人事の指示通りにメンタリング(面談)をするのですが、そのうちに「忙しいから続かない」「もう話すことがなくなった」「意味を感じない」などの声が上がってきます。あるいは、制度だからと義務的に面談し、表面的な会話や雑談で対話が終わってしまうケースも見受けられます。
しかも、メンタリングはメンター・メンティのペアで行うため、「何を話されているのか」という実際の運用状況が人事からは見えません。つまり、ブラックボックスになってしまうわけです。何が起きているのか分からないから、フォローの打ち手も的を外してしまうことが多くなります。
結果として、忙しいメンターの工数が掛かっている割には効果が見えない、という評価が現場から上がり、やがて制度が風化してしまった、という事態をよくお聞きします。
「ペアの相性」「メンターのスキル」に原因や対策を求めるべきではない
なぜ、このような状況が生まれてしまうのでしょうか。よく語られる「ペアの相性」の問題や、メンター・メンティのコミュニケーションスキルの問題も少なからず存在します。育成スキルの高いメンターと、成長意欲の高いメンティがペアを組めば、当然うまくいくでしょう。しかし、そのようなペアばかりつくることは、ほぼ不可能です。メンター側の育成も兼ねていることを鑑みても、そのアプローチでは意味がありません。
実は、個人のスキルや相性の問題ではなく、メンター制度には制度の特性から発生しがちな問題があるのです。それは「信頼関係が構築されていない相手とは、対話が表面的になってしまう」という当たり前ことが忘れられている、ということです。
多くの場合、メンター・メンティは人事からいきなり「あなたのメンターは〇〇さんです」と指定されます。日常業務で接点がなく、月に1回60分程度しか話せない先輩社員に「仕事や人間関係の深い悩み」「将来のキャリアについての夢」などをいきなり語れるものでしょうか。人事から「なんでも相談してください」と言われたところで、率直に対話できるものなのでしょうか。
それは難しいと言わざるを得ません。離職につながるような悩みなど、本当に解決すべき”重い”問題ほど語られにくいでしょう。メンタリングが機能するための前提条件である「信頼関係」が構築されないまま、悩みの解消や育成などの成果だけを得ようとするのは無理がある、ということです。
効果を出すための3つのポイント
前述のとおり、メンター制度が機能するには、まずはペアの信頼関係構築が最優先です。「制度開始時点では信頼関係ができていない」「日常業務では接点が少ない」という、制度の特性上どうしても発生する問題を解消する施策が必要になります。
とはいえ、無尽蔵に時間を掛けられるわけではありません。限られた時間のなかで効率的・効果的に信頼関係を構築していくことが求められます。そのための工夫やノウハウが、メンター制度の運用のポイントのひとつといえるでしょう。
また、2つ目のポイントはメンタリングの効果を実感する工夫です。メンティだけでなく、メンターも「メンタリングを初めて行う」というケースもありえます。その場合、メンタリングの意義や効果について、メンター側も実感を持たないまま「半信半疑」でメンタリングを実施することになります。そのことを踏まえて、メンター側にもメンタリングの効果が実感できるような対話を設計・準備してあげることが効果的です。
そして3つ目のポイントはメンタリングを実際にする場で使える支援です。メンタリングの場面は2人きりである、というのもメンター制度の持つ「構造」です。事前の研修だけではなく、メンタリングのその場で使えるツールやシートを用意するのも効果につながります。
運用設計のポイント
- メンタリングを通じて、段々と信頼関係ができていくプロセスを設計する
- メンタリングの効果・楽しさが実感できる会話内容を準備する
- 事前研修だけでなく実際にメンタリングするときに使うツールを準備する
高い効果につながる具体的な3つの施策
では、上記のポイントを押さえた効果的な3つの取り組みをご紹介します。
①メンタリングの”キックオフ”を集合研修型で行う
メンター制度の導入にあたり、多くの企業がメンター向けに研修を実施しています。メンター制度の意義・目的やメンターの役割を伝え、メンタリングに必要なコミュニケーションスキルを習得する研修の実施は、もちろん効果的です。しかし、研修で学んだからといって「あとはメンターとメンティのペアでやってくださいね」というだけでは、うまくいかないケースがあるのは、今まで述べてきたとおりです。
そこでお勧めなのが「キックオフ」の開催です。ペアでメンタリングを実施する前にメンター・メンティを全員集め、集合研修の形式で1回目のメンタリングを行います。メンタリングの意義や目的を話し合うというメンター研修の要素もありますが、実際のメンタリングを全員でやってみることで、その本質を理解・共有できるというパワフルな取り組みです。
特に、「初対面の人と信頼関係を構築する」という実際には難度の高い対話をファシリテーターのガイドのもとで実施できるところが、キックオフ実施の最大のメリットといえるでしょう。疑問点があれば、その場で解消することもできることもできます。また、共にメンタリングを行う仲間の存在が、継続意欲の向上にもつながります。
②メンタリングで行う「対話の内容」を設計して、提示する
メンタリングでは、仕事における内容に限らず、プライベートなことを含め「自由に何を話しても良い」というのが基本的な考え方です。ただ、何もガイドがないと表面的な会話や雑談、あるいは業務のQ&Aといった「話しやすいこと」に引っ張られてしまいます。メンターとメンティの信頼関係を段階的に構築し、お互いの成長を引き出すような対話のテーマを具体的に設計し、提示してあげることで、全てのペアが効果的にメンタリングできるようになります。
③メンタリング期間の中間でフォローアップのセッションを行う
「キックオフの実施」「対話内容のガイド」などを行うことで、相当程度、メンタリングを効果的なものに変えることができるでしょう。とはいえ、全てのペアが最後まで順調に進むわけではありません。途中でフォローアップを行うことで、「中だるみ」を防ぐことが重要です。それに加え、実際のメンタリングに慣れてきた時期をとらえ、メンタリングの意味づけを「お互いに成長するための大きな機会」と定義しなおすことができれば、その効果をさらに高めるとともに、メンタリングへの動機も高まります。
フォローアップの方法は、「メンターだけ集めて、現在の状況をディスカッションする集合研修」「メンティに人事が個別にヒアリングする」「集まってグループでメンタリングする」など、様々な方法が考えられます。
メンター制度で広がる人材育成の可能性
メンター制度は、新入社員の育成や離職防止につながる効果的な人材育成施策であるとともに、企業における「人を育てる組織文化」を作っていくための土台にもなり得る、大きな可能性を持った取り組みです。
それゆえに、せっかく制度を導入するのであれば、ぜひとも成功させたいものです。「制度だけ作って、あとは現場任せ」「他の会社のやり方を真似るだけ」ではうまくいかないのは、あらゆる人材育成施策に共通します。個々の企業における目的や、メンター・メンティそれぞれの置かれている状況や課題を見極め、自社独自のメンター制度の構築することが成功のカギとなります。
メンター制度の導入支援ツールの提供やメンター向け研修・キックオフの実施など、様々な形でサポートしています。何か、疑問やご相談等があれば、ぜひお気軽にご連絡いただければと思います。